プレバイオティクスは、単なる「腸内細菌のエサになる食品」ではありません。
では一体、プレバイオティクスって何なのでしょうか?
この記事ではまずプレバイオティクスの定義を明確します。
そのあとに
- 代表的なプレバイオティクス
- プレバイオティクスを摂ると腸内で何が起きるのか?
- プレバイオティクスがもたらす健康効果
などを解説していきます。
この記事を読めば、
プレバイオティクスを正しく理解し、自分の食生活にどう取り入れていくべきか学べる内容となっています。
ぜひ最後まで読んでいってください。
プレバイオティクスとは?
「プレバイオティクス=腸内細菌のエサ」と聞いたことがある人も多いのではないでしょうか?
確かにイメージとしては間違っていませんが、現在の定義はもう少し厳密です。
2017年に国際プロバイオティクス・プレバイオティクス科学協会(ISAPP)はプレバイオティクスを次のように定義しています。[1]
宿主の微生物によって選択的に利用され、健康上の利益をもたらす基質
この定義の中の「選択的に利用され」と「健康上の利益をもたらす」の部分が特に重要です。
つまりある成分が腸内細菌に利用されるだけではプレバイオティクスとは呼べません。
宿主の微生物に選択的に利用され、さらに宿主の健康に利益をもたらすことが示されて初めてプレバイオティクスと呼ぶことができるのです。
また定義上では「腸内細菌」ではなく、「宿主の微生物」となっているのもポイントです。
プレバイオティクスというと腸のイメージが強いですが、現在の定義では作用する場所を腸に限定していません。
腸活を意識して学んできた身としてはこの部分はとても新鮮でした。
口腔内や皮膚など、腸以外に存在する宿主の微生物も対象となります。
さらに「食物繊維」ではなく「基質」となっていることから、プレバイオティクスは食物繊維に限定された概念でもないことが示されています。
では食物繊維とプレバイオティクスは何が違うのでしょう?次の章で詳しく見ていきましょう。
食物繊維=プレバイオティクスではない
プレバイオティクスと聞くと食物繊維を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか?
確かに代表的なプレバイオティクスであるイヌリンやFOS(フルクトオリゴ糖)などは食物繊維に分類されます。
しかしすべての食物繊維がプレバイオティクスというわけではありません。
前章でも紹介したようにプレバイオティクスは
- 宿主の微生物によって選択的に利用されること
- 宿主に健康上の利益をもたらすこと
が重要です。
現在はさらに踏み込んで、対象となる宿主の微生物叢の変化と健康上の利益を同じ研究の中で確認することなど、プレバイオティクスと分類するための具体的な基準も提案されています。[2]
例えばセルロースは食物繊維ですが、ヒトの腸内細菌には利用されにくいためヒトのプレバイオティクスとは通常考えられていません。一方、牛などの反芻動物の腸内にはセルロースを利用できる微生物が存在するためプレバイオティクスになりうるのです。
またプレバイオティクスは食物繊維だけに限定された概念でもありません。
2017年のISAPPのコンセンサスでは、ポリフェノールなどの非炭水化物も十分なエビデンスが示されれば、プレバイオティクスになりうるとしています。
これまでに何度も言っていますが、
「微生物により選択的に利用される」と「宿主の健康上の利益が示されている」
がセットになって、初めてプレバイオティクスと認められるのです。
代表的なプレバイオティクスと含まれる食品
プレバイオティクスの定義が分かったところで、次は「実際に何を摂ればいいの?」ってなりますよね?
代表的なプレバイオティクスとしてイヌリンやFOS(フルクトオリゴ糖)、GOS(ガラクトオリゴ糖)などが挙げられます。
イヌリンとFOSは「イヌリン型フルクタン」に分類され、フルクトースを中心に構成されたオリゴ糖でヒトを対象とした研究も数多く行われています。一方、GOSはガラクトースを中心に構成されたオリゴ糖でFOSと並んでプレバイオティクス研究の歴史が長い成分です。
また特定のレジスタントスターチもプレバイオティクスとしてのエビデンスが示された研究が多数あります。
イヌリン型フルクタンやGOS、レジスタントスターチは普段の食事から取り入れることができます。
プレバイオティクスを含む食品を以下に示したので、どの食材にどのようなプレバイオティクスが含まれるかを理解した上で、毎日の食事に取り入れてみてはいかがでしょうか?

ではこれらプレバイオティクスを摂ると腸内ではいったい何が起こるのでしょうか?
次の章ではプレバイオティクスが腸内細菌に利用されてから、私たちの体にどのような影響を及ぼすのかについて見ていきます。
プレバイオティクスを摂ると腸内で何が起こる?
プレバイオティクスを含む食品を食べた後、腸内では何が起こっているのでしょうか?
イヌリンやFOSなどのプレバイオティクスは私たちの持つ消化酵素では分解されにくく、大腸まで届きます。
大腸に届いたプレバイオティクスは特定の腸内細菌により選択的に利用されます。例えばイヌリン型フルクタンの摂取後にビフィズス菌が増加するといった結果が多くの研究で報告されています。[3]
さらに重要なのは単に腸内細菌が増えるだけではないということです。
腸内細菌がプレバイオティクスを利用する過程で酢酸・プロピオン酸・酪酸などの短鎖脂肪酸をはじめ様々な代謝産物が生み出されます。また、ある腸内細菌が作った代謝産物を別の腸内細菌が利用する「クロスフィーディング」と呼ばれる関係もあります。
つまりプレバイオティクスは特定の腸内細菌のエサになるだけではなく、腸内細菌同士のネットワークや代謝活動にも影響を及ぼすのです。
こうしてできた腸内細菌や代謝産物の変化が私たちの体にさまざまな影響を与えると考えられています。
では実際にプレバイオティクスを摂ることでどのような健康効果を期待できるのでしょうか?
次の章ではヒトを対象とした研究をもとに見ていきます。

プレバイオティクスがもたらす健康効果
プレバイオティクスが腸内細菌に利用されることで私たちの体にはどのような健康効果が期待できるのか?
まず比較的わかりやすいのが排便への影響です。
便秘傾向にある健康な成人を対象としたランダム化比較試験では、イヌリンを12g、4週間摂取したグループがプラセボと比較して排便回数が増加したことが報告されています。[4]
またイヌリンやFOSなどのイヌリン型フルクタンについては多くのヒト介入研究が行われており、ビフィズス菌などの腸内細菌や消化管機能への影響が研究されています。
一方、プレバイオティクスの研究対象は腸だけではありません。
血糖・脂質代謝、免疫機能、ミネラル吸収など様々な健康への影響が研究されています。
ただしひとつ注意しないといけないのは、健康への影響はプレバイオティクスの種類や摂取量、対象となる人によって異なります。ある種のプレバイオティクスで確認された健康効果を、プレバイオティクス全体の効果として考えることはできません。また同じプレバイオティクスを摂っても、すべての人で同じ効果が得られるとも限りません。
ではなぜ人によって効果が違うのでしょうか?
次の章ではプレバイオティクスの個人差について見ていきます。
プレバイオティクスへの反応は個人差がある?
同じプレバイオティクスを同じ量摂っても、すべての人の腸内で同じ変化が起こるとは限りません。
その理由の一つとして考えられるのが、もともと持っている腸内細菌叢の違いです。
健康な成人を対象とした研究ではオリゴフルクトース強化イヌリンを4週間摂取してもらったところ、摂取前のビフィズス菌数や腸内細菌の代謝状態によって、摂取後の反応に大きな違いが出ることが報告されています。[5]
私たちの腸内細菌叢は一人ひとり異なります。
そのため同じプレバイオティクスを同じ量摂ったとしても、腸内細菌の反応には個人差が生じることがあります。
そしてもう一つ注意が必要なのは
「腸内細菌が大きく変化した人ほど、健康効果も大きいとは限らない」ということ。
わかりやすく具体例を出すと
Aさん:イヌリンを摂取→ビフィズス菌が増えた
Bさん:イヌリンを摂取→ビフィズス菌があまり増えなかった
この2人を見て、ビフィズス菌が増えたAさんのほうが健康効果も大きいとは必ずしも言えません。
プレバイオティクスを摂取してから健康効果が現れるまでには、腸内細菌の変化だけでなく、腸内細菌が生み出した代謝物やクロスフィーディングなど、様々な要因が関係していると考えられるためです。
よって現時点では「あなたの腸内細菌叢にはこのプレバイオティクスが最適」と簡単に判断できる段階ではありません。
プレバイオティクスへの反応を考える上で、私たちがどのような腸内細菌叢を持っているかも重要な要素のひとつです。
ちなみに僕自身も、過去に自分の腸内環境がどうなっているのか調べてみました
→「自分の腸内環境を調べてみた」の記事はこちら
まとめ
ここまでプレバイオティクスについて見てきました。
プレバイオティクスは単なる「腸内細菌のエサになる食品」ではありません。
また食物繊維がすべてプレバイオティクスというわけでもありません。
プレバイオティクスは腸内細菌に利用されることで、腸内細菌叢の変化・代謝産物の産生などを引き起こし、その先に私たちの健康への影響があると考えられています。
一方で、その反応は誰にでも同じように起こるのではなく、もともと持っている腸内細菌叢などの要因によって個人差が生じることも分かってきています。
大切なのは「○○を食べればいい」とひとつの食品に注目するのではなく、様々な食品から腸内細菌のエサとなる成分を日々取り入れていくことです。
「腸内細菌のエサ」というイメージだけでは見えてこなかったプレバイオティクスの奥深さ。
僕自身、この記事を書くために調べて行く中で、「何を食べるか」だけではなく「腸内細菌がそれをどう利用するか」まで考えることの大切さを痛感しました。
毎日の食事を少し違った視点から見てみると、腸活はもっと面白くなるかもしれません。


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