ヨーグルトや乳酸菌飲料でよく見かける「プロバイオティクス」「生きて腸まで届く」という言葉。
プロバイオティクスと聞くと、なんとなく「腸によい生きた菌」というイメージがあるかもしれません。
さらに「生きて腸まで届く」と聞くと、その菌がそのまま腸に住み着くように感じませんか?
では実際のところどうなのでしょうか?
✅乳酸菌やビフィズス菌はプロバイオティクス?
✅発酵食品に含まれる菌はプロバイオティクスになるの?
この記事ではプロバイオティクスの基本から、乳酸菌・発酵食品との違い、そして「摂った菌は腸に住み着くのか?」までを論文をもとにわかりやすく解説していきます。
プロバイオティクスとは?
国際的な専門家による会議でプロバイオティクスについて明確な定義が示されています。[1]
適切な量を摂取したときに、宿主に健康上の利益をもたらす生きた微生物
わかりやすく表現すると
- 生きた微生物であること
- 適切な量を摂取すること
- 健康上の利益が示されていること
つまり生きた菌が入っているだけではプロバイオティクスとは呼べません。
生きた菌が入っていたとしても適切な量でなかったり、健康上の利益が示されなければ、プロバイオティクスとは言えないのです。
日常でよくある1シーンを例に出すと、発酵食品を加熱処理(→味噌汁と火で温めるなど)して、菌が死んでしまえばいくら発酵食品を摂っていたとしてもここでいうプロバイオティクスの定義からは外れることになります。
腸活では「善玉菌」という言葉もよく使われますが、プロバイオティクス=善玉菌というわけでもありません。
「体に良さそうな菌」=プロバイオティクスではなく、
「生きた菌」+「適切な量」+「健康上の利益」の3つをセットにして覚えておくと理解しやすいでしょう。

乳酸菌・ビフィズス菌=プロバイオティクス?
プロバイオティクスと聞くと「乳酸菌」や「ビフィズス菌」を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか?
実際に、乳酸菌やビフィズス菌の中にはプロバイオティクスとして利用されているものもあります。
ただし乳酸菌やビフィズス菌ならすべてプロバイオティクスというわけではありません。
ここで知っておきたいのが「菌株」という考え方です。
同じ種類の菌でも「菌株」が違えば働きも変わってきます。
細菌は「属」「種」、さらに細かく「菌株」まで分類されています。
ヨーグルトや乳酸菌飲料のCMや商品パッケージに
「〇〇株」「△△株」
と表示されているのを見かけたことはないでしょうか?
この「〇〇株」「△△株」にあたるのが菌株です。
プロバイオティクスを考える上で、この菌株の違いがとても重要になってきます。
そのため「乳酸菌だから腸によい」とひとまとめに考えるのではなくて、「どの菌株にどのような健康効果が期待できるか?」まで見ることが大切です。
発酵食品=プロバイオティクスではない
ここまで読むと「生きた菌を含む発酵食品もプロバイオティクスなの?」と思うかもしれません。
しかし発酵食品=プロバイオティクスというわけではありません。
発酵食品は微生物の働きと食品成分の変化を利用して作られた食品です。ヨーグルトや納豆など、生きた菌を含むものもありますが、すべての発酵食品に生きた菌が含まれるわけではありません。[2]
また生きた菌が含まれていたとしても、それだけでプロバイオティクスと呼べるわけではありません。
先ほど紹介したように
「生きた微生物」
「適切な量」
「健康上の利益」
の3つの条件を満たす必要があります。
つまり発酵食品だからプロバイオティクスなのではなく、その食品に含まれる特定の微生物がプロバイオティクスの条件を満たしているかがポイントです。
発酵食品については、こちらの記事で詳しく解説しています。
→「発酵食品とは?生きた菌はいる?腸内環境への影響を論文から解説」
プロバイオティクスは腸で何をする?
ではプロバイオティクスとして摂取した微生物は、私たちの腸でどのような働きをするのでしょうか?
プロバイオティクスの働きは1つだけではありません。
研究では腸内の微生物や腸管粘膜、免疫系などに様々な形で作用することが報告されています。[3]
(ただしその働きや健康上の利益は菌株によって異なります。)
ここでは代表的な働きを3つ紹介します。
①腸内の微生物に働きかける
私たちの腸にはもともとたくさんの微生物が住んでいます。
プロバイオティクスはこれらの腸内細菌と相互に作用しあって、善玉菌が増えやすい環境を整えたり、逆に病原性のある微生物(悪玉菌)とは競合してその増殖を抑えたりしています。
また短鎖脂肪酸などの代謝産物を作り出すことにも関与しています。
②腸のバリア機能をサポートする
腸には腸内にあるものがむやみに体内に入り込ませないように「バリア」としての役割があります。
プロバイオティクスには腸を覆う粘液を作ったり、腸管上皮細胞同士の結びつきをより強固なものにしたりして腸のバリア機能に影響を与えるものがあります。
プロバイオティクスは私たちの腸内細菌だけではなく、腸自体にも働きかけているのです。
③免疫系に働きかける
腸は食べ物や微生物など外から入ってきた様々なものと接する場所です。
そのため腸には多くの免疫細胞が存在します。
プロバイオティクスは腸管の免疫細胞や上皮細胞と相互に作用しあって、サイトカインの産生など免疫反応に影響することが報告されています。
ただしここで重要なのはすべてのプロバイオティクスが同じように働くのではないということです。
前述したように、その働きは菌株によって異なります。
「プロバイオティクスを摂れば〇〇に効く」とひとまとめに考えるのではなく、どの菌株にどのような働きや健康上の利益が確認されているかという視点が大切です。

プロバイオティクスで摂った菌は腸に住み着くの?
プロバイオティクスを摂るとその菌が腸まで届いて、そのままずっと住み続ける。
そんなイメージを持っている人もいるかもしれません。
では実際にプロバイオティクスで摂った菌は私たちの腸に住み着くのでしょうか?
結論から先に言ってしまうと、プロバイオティクスとして摂った菌の多くは必ずしも腸に長期間住み続けるわけではありません。
乳酸菌やビフィズス菌の腸内への定着についてまとめたレビューがあります。
摂取した菌の腸内での持続性は、菌種や菌株などの違いだけによるものではなく、もともとの腸内細菌叢や食事など様々な要因の影響を受けることが分かっています。[4]
つまり
「生きて腸まで届く」=「腸に住み着く」
ではないということです。
では腸に住み着かないのであれば意味がない!?
そんなことはありません。
前の章でも紹介したようにプロバイオティクスは腸内にいる間、ほかの微生物や腸管上皮・免疫系などに作用して、健康上の利益をもたらす可能性があります。
そのためプロバイオティクスは
「摂った菌がそのまま自分の腸内細菌になる」
というよりは
「腸にいる間は宿主や腸内環境と相互作用する」
と考えるほうイメージとしてはあっているでしょう。
ヨーグルトを食べればプロバイオティクスを摂れる?
プロバイオティクスと聞くと、ヨーグルトや乳酸菌飲料を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか?
しかし「生きた菌を含む食品=プロバイオティクス食品」ではありません。
一般的な発酵食品では生きた微生物が含まれていたとしても、その菌の種類や量が明確でなかったり、健康上の利益が確認されていないことも多々あります。
そのため生きた菌を含む発酵食品の多くはプロバイオティクスではありません。
一方で、市販のヨーグルトの中には使用している菌株や菌数が明示され、その菌株について特定の健康上の利益が報告されている商品もある。
特定の健康上の利益を考えるためには
- どの菌株なのか
- どのくらいの量を摂るのか
- 上記条件で摂った場合に、どのような健康上の利益が確認されているのか
まで見ることが重要です。
つまり
「乳酸菌入り」「生きて腸まで届く」「100億個配合」といった情報だけで特定の健康効果が得られるかまでは判断できません。
「どの菌を、どのくらい摂った時に、どのような健康上の利益が確認されているか?」
まで確認することが、プロバイオティクスを理解するポイントとなります。
プロバイオティクスの定義にある「健康上の利益」と日本で食品に「健康機能を表示できるか」どうかは分けて考えなければいけません。
科学的にプロバイオティクスの条件を満たしていたとしても、それだけで商品のパッケージなどに健康効果を自由に表示できるわけではありません。
日本では食品の機能表示について別途ルールが定められています。
プロバイオティクスとプレバイオティクスの違いは?
プロバイオティクスとよく似た言葉にプレバイオティクスがあります。
名前は似ていますがこの2つは全くの別物です。
プロバイオティクス
→適切な量を摂取したときに、健康上の利益をもたらす生きた微生物
プレバイオティクス
→腸内の微生物に利用され、健康上の利益をもたらす基質
食物繊維やオリゴ糖などの一部がプレバイオティクスとして有名ですよね?
プレバイオティクスについては次の記事で詳しく解説します。
→「プレバイオティクスとは?」(ただ今、執筆中。)
まとめ
プロバイオティクスとは
適切な量を摂取したときに、宿主に健康上の利益をもたらす生きた微生物のことです。
「乳酸菌が入ってる」や「生きて腸まで届く」というだけプロバイオティクスとは限りません。
今回のポイントをまとめると
- プロバイオティクスには「生きた微生物」「適切な量」「健康上の利益」という条件がある。
- 乳酸菌やビフィズス菌が入っていても全てがプロバイオティクスとは限らない。
- プロバイオティクスによる健康上の利益を考えるときは菌株単位まで注目!
- 発酵食品とプロバイオティクスは別物。
- 摂った菌が必ずしも腸に長く住み続けるわけではない。
- ヨーグルトなどには、実際にプロバイオティクスの条件を満たす商品もある。
プロバイオティクスを考えるときは
「どの菌を、どのくらい摂った時に、どのような健康上の利益が確認されているか?」
を見ることが大切です。
「乳酸菌だから腸に良い」で終わらせず、その菌について何が分かっているのかを見る。
これがプロバイオティクスとの上手な付き合い方ではないでしょうか?
①Hill C, et al. Nat Rev Gastroenterol Hepatol. 2014. PMID: 24912386
②Marco ML, et al. Nat Rev Gastroenterol Hepatol. 2021. PMID: 33398112
③Plaza-Diaz J, et al. Adv Nutr. 2019. PMID: 30721959
④Xiao Y, et al. Annu Rev Food Sci Technol. 2021. PMID: 33317320


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