食物繊維とは?
「食物繊維は腸に良い」
なんとなくそんなイメージを持っている方は多いのではないでしょうか?
ではそもそも食物繊維とは何なのでしょうか?
三大栄養素の一つ、炭水化物は「糖質」と「食物繊維」に分けられます。
「糖質」の多くは消化酵素により分解され、小腸から吸収されて私たちのエネルギー源になります。
一方で、「食物繊維」は人の消化酵素では消化されにくいため、小腸では消化・分解されず大腸まで届く成分です。
国際的な食品規格を定めるコーデックス委員会では、食物繊維を基本的に「人の小腸での消化過程において、消化酵素による分解を受けにくい炭水化物の重合体」と定義しています。
つまり私たちが食べた食物繊維の多くは、小腸で消化・吸収されずにその先の大腸へと進んでいきます。
そして「食物繊維」とひとことで言っても、実は1種類の成分ではありません。
セルロース、ヘミセルロース、ペクチン、イヌリン、レジスタントスターチなど、さまざまな種類があり、それぞれ化学的な組成や構造が異なります。
これらの違いは食物繊維が腸の中でどのように働くのかにも関係しています。[1]
では食物繊維にはどのような違いがあるのでしょうか?
次は食物繊維の「種類」についてもっと詳しく見ていきましょう。
食物繊維にはどんな種類がある?
食物繊維の分類としてよく知られているのは、水に溶けやすい性質を持つ「水溶性食物繊維」と水に溶けにくい「不溶性食物繊維」ではないでしょうか?
水溶性食物繊維は腸内細菌によって発酵・利用されやすいものが多いとされています。腸内細菌によって発酵されると、酢酸・プロピオン酸・酪酸などの「短鎖脂肪酸」がつくられます。
一方、水分を不溶性食物繊維は水分を保持しながら便のかさを増やし、排便を助ける働きがよく知られています。
このように
水溶性食物繊維 → 腸内細菌に利用されやすい
不溶性食物繊維 → 便のかさを増やしやすい
と説明されることが多いですが、実は食物繊維の働きはそんなに単純ではありません。
「水に溶ける・溶けない」だけでは決まらない。
同じ水溶性食物繊維でもすべてが発酵されるわけではありません。また不溶性食物繊維の中にも腸内細菌によって発酵されるものがあります。
食物繊維が腸内細菌にどのように利用されるかは「水に溶けるかどうか」だけではなく、様々な性質が関係しています。
例えば
- 化学組成:どのような成分・糖が、どのようにつながってできているか
- 結晶性:分子がどれくらい規則正しく並んでいるか
- 多孔性:構造の中にどれくらい細かなすき間があるか
- 分岐度:分子の鎖がどれくらい枝分かれしているか
- 粒子サイズ:食物繊維の粒子がどれくらいの大きさか
などです。
こうした構造や性質の違いによって、腸内細菌が食物繊維にアクセスしやすいか、どの程度発酵できるかが変わり、腸内細菌叢への影響にも違いが生まれます。[1]
つまり「食物繊維ならどれでも同じ」ではなく、どんな食物繊維を摂るかによって腸内での働きも変わってくるということです。

なぜ食物繊維が腸活にいい?

腸内細菌のエサになり、短鎖脂肪酸が作られる
食物繊維は消化されにくく、小腸を通過して大腸に到達します。
大腸に届いた食物繊維は腸内細菌が利用し(発酵し)、酢酸やプロピオン酸、酪酸などの短鎖脂肪酸が作られます。
短鎖脂肪酸の主な働き[2]として
酢酸は体内で最も多い短鎖脂肪酸で全身のエネルギーとして利用されます。主な働きとして肝臓で脂質合成・コレステロール調整に関わったり、脳のエネルギー源になる可能性が示唆されています。
プロピオン酸は肝臓で多く利用され、糖新生を抑えます。主な働きとして血糖値の上昇を抑えたり(GLP-1分泌を促進)、肝臓での糖の作り過ぎを抑えます。
酪酸は大腸で主に働き腸のエネルギー源となります。主な働きとして腸のバリア機能を強化(タイトジャンクションをサポート)したり、炎症を抑え、免疫のバランスを整えます。
このように、短鎖脂肪酸は腸管バリアや免疫、代謝など、私たちの体のさまざまな働きに関わっています。[3]
短鎖脂肪酸は料理で言うところの“調味料的存在”なのです。
発酵されにくい食物繊維にも意味がある!?
ここまで読むと「腸内細菌に発酵されやすい食物繊維の方が腸活にはいいのでは?」と思うかもしれません。
しかしそんなに単純ではありません。
発酵されにくい食物繊維は便の水分保持やかさ増し、腸管通過と排便をサポートしてくれます。
食物繊維にはそれぞれ異なる働きがあるため、
特定の食物繊維だけではなく、さまざまな食品から摂ることが大切なのです。
重症患者を対象とした21研究・2,084人のメタ解析では、食物繊維を補充した群で入院期間が平均3.16日短かったことが報告されています。[4]
一方で、すべての研究で同じ結果が得られているわけではなく、対象も主に経腸栄養を受ける重症患者です。
そのため、「食物繊維を摂れば誰でも入院期間が短くなる」という意味ではありませんが、食物繊維と腸内環境の関係が実際の病気の回復にも関係する可能性を示した興味深い研究です。
1日にどれくらい必要?
「腸活とは?」の記事でも紹介しましたが、
「日本人の食事摂取基準(2025年版)」によれば、食物繊維の目標摂取量は
男性;22g/日以上
女性;18g/日以上
となっています。
では実際にどのくらい食物繊維を摂れているでしょうか?
厚生労働省の調査によると、20歳以上の日本人が摂っている食物繊維は、平均18.1g/日だそうです。
ここで注目したいのが、成人の食物繊維の理想的な摂取量は「25g以上/日」と考えられていることです。
つまり実際の摂取量とのギャップを考慮して、現実的な“目標量”を設定しています。
22g摂れば十分という意味ではないのです。
多くの日本人にとって食物繊維は「もう少し意識して増やしたい栄養成分」と言えそうです。
まずは目標量22g/18gを意識する。余裕があれば25g以上も一つの目安にしてみましょう。
【成人の平均摂取量】18.1g/日
【30-64歳の目標摂取量】男性22g・女性18g以上/日
↓↓↓ 余裕があれば
【成人の理想摂取量】25g以上/日
食物繊維が多い食品は?
では食物繊維を増やすにはどのような食品を選べばよいのでしょうか?
食物繊維は野菜だけでなく、穀類・豆類・いも類・きのこ類・海藻類・果物などさまざまな植物性食品に含まれています。「食物繊維=野菜」というイメージがあるかもしれませんが、実は普段の主食やおかずを少し変えるだけでも、食物繊維を増やすことができます。
| 食品グループ | 取り入れやすい食品例 |
| 🌾穀類 | もち麦、大麦、玄米、オートミール、全粒粉など |
| 🫘 豆類 | 納豆、大豆、あずき、ひよこ豆など |
| 🥦 野菜 | ごぼう、ブロッコリー、かぼちゃなど |
| 🍠 いも類 | さつまいも、じゃがいも、里いもなど |
| 🍄 きのこ類 | しめじ、えのき、しいたけなど |
| 🌊 海藻類 | わかめ、ひじき、のりなど |
| 🍎 果物 | キウイ、りんご、バナナなど |
ここで大切なのは、「食物繊維〇g」という数字だけに注目しすぎないことです。
前半で紹介したように、食物繊維は種類や構造によって、腸内細菌による発酵のされ方や腸での働きが異なります。
そのため特定の食品ばかりを食べるのではなく、いろいろな食品からさまざまな食物繊維を摂ることを意識してみましょう。
今日からできる「食物繊維+〇g」
「食物繊維をしっかり摂りましょう!」と言われても、毎日の食事で何g摂れているのか計算するのは大変ですよね。そこでおすすめしたいのが、いつもの食事に食物繊維を含む食品を「1品プラスする」という考え方です。
例えば、白米にもち麦50gを追加すれば約2.1g、納豆を1パック追加すれば約3.8g、ブロッコリー70gなら約3.0gの食物繊維をプラスできます。最初から完璧を目指すのではなく、まずはいつもの食事に「+1品」から始めましょう。
ではいつもの食事に「+1品」でどれくらい食物繊維を増やせるのでしょうか?
| 食品 | 1回に食べる量の目安 | 食物繊維量(g) |
| もち麦(押麦・炊飯後) | 50g | +2.1g |
| 納豆 | 1パック(40g) | +3.8g |
| 大豆(水煮) | 50g | +3.4g |
| ブロッコリー(ゆで) | 70g | +3.0g |
| さつまいも(皮つき・蒸し) | 100g | +3.8g |
| ぶなしめじ(ゆで) | 50g | +2.1g |
| えのき(ゆで) | 50g | +2.3g |
| わかめ(生) | 30g | +1.1g |
| キウイ(緑肉腫) | 可食部80g | +2.1g |
※もち麦は「おおむぎ/押麦/めし」を参考値として使用。商品によって食物繊維量は異なります。
「出典:文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
毎日同じ食品だけで補うのではなく、いろいろな食品を組み合わせながら「+1品」を意識してみましょう。
まとめ
ここまで食物繊維の種類や腸内細菌との関係、1日の目標摂取量、食物繊維を多く含む食品を紹介してきました。
食物繊維というと「水溶性」「不溶性」という分類はよく知られていますが、実際はそれだけではありません。
化学組成や構造によって腸内細菌による発酵のされ方も異なり、腸での働きも違ってきます。
腸内細菌によって発酵される食物繊維は酢酸・プロピオン酸・酪酸などの短鎖脂肪酸の産生につながります。一方、発酵されにくい食物繊維にも便のかさを増やしたり、腸管通過をサポートしたりと大切な役割があります。
だからこそ「この食物繊維さえ摂ればOK!」と安易に考えるのではなく、穀類・豆類・いも類・きのこ類・海藻類・果物などさまざまな植物性食品から食物繊維を摂ることを心がけてください。
まずはいつもの食事に「+1品」から。
今日の食事にいつもと違う食物繊維をひとつ加えることから始めてみましょう。
①He X, et al. Advances in understanding dietary fiber: Classification, structural characterization, modification, and gut microbiome interactions. Food Chem X. 2025. PMID: 39840651.
②Zhang D, et al. Short-chain fatty acids in diseases. Cell Commun Signal. 2023. PMID: 37596634.
③Koh A, et al. From Dietary Fiber to Host Physiology: Short-Chain Fatty Acids as Key Bacterial Metabolites. Cell. 2016. PMID: 27259147.
④Liu T, et al. Effect of dietary fiber on gut barrier function, gut microbiota, short-chain fatty acids, inflammation, and clinical outcomes in critically ill patients: A systematic review and meta-analysis. JPEN J Parenter Enteral Nutr. 2022. PMID: 34951702.


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